セラピスト兼トレーナーのわたなべです。
肩の痛みはその構造ゆえに特殊です。
じっとしていても痛い、周りまで痛い、なぜそんな風に痛むのか。
理学療法士の目線で解説していきます。
肩という関節(※1)はかなり特殊で、
膝や背骨のように骨と骨で支え合うということができません。
肩甲骨に腕が「ぶら下がっている」関節です。
筋肉(インナーマッスル)や靭帯など、繊維系がロープの役割をしてくれているおかげで、
重い腕をぶら下げておけるし、そこから自由に動かすことができます。
つまり、動かす時はもちろん、じっとしている時もインナーマッスルや靭帯には常に負荷がかかっています。
なので、
繊維系の組織の炎症や傷による影響が大きく、じっとしていても痛いということが多いのが肩です。
↑傷や炎症部分だけにとどまらない痛み・・・
肩の疾患に特徴的なのが、この寝ているときの痛み。
起こるには、解剖学と人間の身を守る反応が絡み合った理由があります。
肩に痛みがあると、無意識に縮こまって猫背が進行します。
すると、肩の丸みに沿って肩甲骨が外に広がる・前に被さるようになります。
この姿勢は、痛みを回避したいという反応なので、そうそう崩れることはありません。
寝てみると、肩甲骨が浮いてしまいます。
この状態で腕を床に置くと、
シーソーのように肩甲骨についている側が突き上げるようになり、
繊維系の組織に負荷がかかってしまいます。
これが、仰向けで肩の痛みが増悪する原理です。
こちらで寝方の工夫を書いています。
肩甲骨:腕=1:2で動くというのが、肩の運動学の基本です。
肩甲骨は、腕が動く時に意識しなくてもコンビネーションが発揮できるよう、常にスタンバイしています。
そのため、腕との連結部である肩に不調があると、
肩甲骨はその不調を察知しフォローしようとします(賢い!)。
でもそれが裏目に出ます。
フォローのため周囲の筋肉が過度に緊張するせいで、背中や首などにこりや痛みが波及します。
本来の肩の痛みが落ち着いてくると、この二次的な痛みも落ち着いてきます。
ただ、時間がかかることが多いので、セルフケアはしておいたほうが賢明です。
よく言われるのは、
「日常生活ではなるべく使ってね〜」
とか、
「肩甲骨は動かしておいてね〜」
だと思います。
でも、痛いんですよね。
「先生、痛いんですよ?」って言いたくなってしまいますね。
この件について、次で説明します。
なるべく動かしたほうがいいのか?
結論を朝ドラ的に言うと、「半分、ホント。」
・・・・・・。
大事にしすぎず、「なるべく」動かしたほうがいいと聞いたことがある人も多いと思います。
この「なるべく」は、日常生活で使える範囲は使ってくださいねーという意味です。
無理に意識して動かせと言うことではありません(炎症がおさまっている場合はあり得ますが)。
その理由は、
怖い気持ちで全く動かさないと、肩甲骨まで動きが悪くなって治りが遅くなるからです。
(だから、お医者さんから肩甲骨動かしといてね!と言われるんですね。)
それでもを動かすのは怖いという方は、
痛い方の腕を反対の手で支えるなど腕の重さを軽減して、肩甲骨を動かす運動をしてみてください。
決して痛みをこらえてバンザイの練習!なんてしないでください。
荒治療と称して無理をし、悪化した例をたくさん知っています。
傷ついたり、炎症が起きている部分はもちろん痛いけど、肩は構造的に二次的な痛みが出やすい部分です。
痛みの根源以外にも痛みが広がることも多く不安も大きいですが、
少しわかっていれば必要以上にストレスを感じずに済むと思います。
ご紹介したように工夫次第でコントロール可能な痛みもあります。
ストレスも肩の痛みには大敵ですので、この記事で辛い中にも少しの安心感を感じていただければ幸いです。
※1 本来肩は鎖骨・肩甲骨・上腕骨(腕)ので構成され、いくつかの関節の複合体です。
今回はわかりやすく肩甲骨と腕の関節を「肩」としました。
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